背筋が凍る衝撃の演劇体験 - スマホを落としただけなのに観劇感想
辰巳雄大主演
舞台「スマホを落としただけなのに」
観てきました。
わかっては、いたんです。
知っては、いたんです。
舞台「スマホを落としただけなのに」カンパニーの放つ気迫。
だって去年観たんやもん。
ただ、今年、昨年の続きとしてアンコール上演となったこの作品、
パワーが…倍増どころではありませんでした。
こういう演劇体験を欲していた。
この作品に関して、私にとっては、ストーリーを楽しむためのものじゃなく、ただひたすらに役者さんたちのお芝居への熱を楽しむためのものだったと思っています。
というのも私、この作品は、原作小説は読んでいませんが、映画に関しては1作目をたまたま映画館で観ており(2作目もこの舞台決まったから映画館行ったし)、
「スマホを落としただけ」で起こるサイバー犯罪の恐ろしさも、稲葉麻美が実は山本美奈代という女性がなりすました姿だということも、去年の舞台版の初見より前から知っていました。
もちろん、映画と舞台はストーリーが違うし設定も多少異なりますが…。
なので、インタビューなんかで辰巳くんや浜中文ちゃんが、こういう犯罪の恐ろしさがわかるよ、的な事を言ったりもしていましたが、それはわかっていたし、
ラストのハチバンの辺りもなかなかですが、結局ハチバンの正体が分からないままなことをふまえると、一番の衝撃シーンって稲葉麻美の正体のところなのかなって思うけどそれもわかってるので、
ストーリーに驚いたり揺さぶられたりとかいうものではなく、2時間ちょっと、ただただ彼らの放つ熱に夢中になる時間でした。
昨年観た時の衝撃も相当なものでしたが、全キャストさんがパワーアップした今年。
しかも、4公演観ましたが、その中でも公演を重ねるごとに更に凄みを増していくという…なんというか…その恐ろしさに目を瞠りました。
正直なことを言うと、私的1公演目を観た時は、メイン2人以外のお芝居が、ものすごく気合いが入り過ぎに感じたと言うか、あれ去年こんな感じだったっけ?ってなって、ほんと正直言うと、ちょっと観ててしんどいかな…ってなったんですよね。
それが、回数重ねるごとに、すっかりその空気に取り込まれたのか、全然マイナスなこと感じなくなってて、もう完全に皆さんのお芝居の世界やリズムの虜になってました。
そして実は今回一番驚いたのは、早川聖来ちゃんのお芝居でした。
去年の時から雑誌等でも絶賛されてるのを目にしてたんですが、実は私は内心、そんな言うほど上手い?って去年は思ってました。
なんか、存在感があまりナチュラルじゃなかったというか、異様に浮いてる感じがしたんですよね。そして麻美的クライマックスのシーンはほとんど印象に残ってなかった…。
ただ今年は、出て来た時から雰囲気が去年と全然違って、ちゃんとそこに稲葉麻美として存在してるって感じられたし、だけどあの役として必要な異質感はちゃんと保たれていたし、後半の、秘密を全部打ち明けるシーンの熱演もとても素敵でした。
1年の時間経過ってすごいなぁ。若いから余計に成長度合いが違うよね。
細かいこと言うけど、取調室で秘密を打ち明けるシーンの、「真実と向き合わなくて済む場所が」の後の、「世界のどこかにあるのなら」という一言の熱量がすごくすごく好きでした。
そしてとてもアドリブに強くなってました。笑
富田と「(ビール)1本だけ!」とイチャつくシーン、毎公演アドリブで、去年こんなのあったっけ?って思ったけど、千穐楽で去年は無かったって言っててやっぱりってなったし、
富田役の、のりっくさん(佐藤永典さん)のがんばりもすごかったけど、それに対する返しのバリエーションがすごすぎて、この子ほんとにハタチのアイドル!?ってなりました。笑
のりっくさんがIKKOさんネタで来た回(千穐楽かな)で、もともと毎回やるバックハグの時に「背負い投げ~!」って返したの、もうなんか、上手すぎて、事前にネタ知らなかったって聞いた時ちょっと鳥肌立ったもんね。笑
カテコで「乃木坂のお仕事と両立出来て」って言ってて、公演期間長くなかったのにそんな忙しいの?と思ったら、初選抜入りのシングルのリリース週だったんですね!それは大変だっただろうな…お疲れさまでした。
そして浜中文ちゃん。
去年観た時は全体的な空気に圧倒されて終わったので、あんまり深く考えてなかったのですが、浜中文ちゃんは、このひと作品の中で幅のある複数の人格を演じてるんですよね。
マザコン変態(と簡単に括りたくはないのだけどわかりやすく)のヤマダタロウ、善人風のサイバーレスキューの浦野善治、麻美を追い詰める(救おうとする)オクムラヒカル、そしてそのどれにも属さない、取調室でのハチバン。
複数の人格だけど、間違いなくひとりの人間で。
どれが本当でどれが嘘で…いやウソとかホントとか無いんだろうな…なんせ、とても難しい役だったんだなぁって今年やっと気づきました。笑
そして浜中文ちゃんの演技力にまたこれ圧倒されました。
冷酷な殺人鬼で、何考えてるかわからなくて、でも色んな人格をみる限り、もしかしたら加賀谷よりは理解出来る部分があるかも知れないなって、わかりやすい人間的な部分があるかも知れないなって思う役。
特にヤマダタロウなんかはね。過去に母親から受けた仕打ちが無ければきっとあの人格は生まれてないわけで、それまでもサイバー犯罪に手を染めていたかはわからないからなんとも言えないけど、もしかしたらヤマダタロウが生まれてなければ他の人格も生まれてないかも知れない。
オクムラヒカルの時も、麻美と共に生きられるかも知れないっていう望みをきっと持ったんだもんね。救いを求めていたのかなって思えるし。そこは映画と大きく違うところだったなぁ。
映画の浦野(映画では浦野という名前しか出てこない)は麻美の秘密を知ってなお、殺す気満々だったもんね。
なんか色々考えさせられる役でした。
浜中文ちゃん上手かったなぁ。
どんなに周囲の刑事や加賀谷が取り乱したり声を荒げようと、常に飄々としていて、基本優位に立った物言いで、ヤマダタロウやオクムラヒカルの時にはあった揺らぎも、取調室の中では基本的には無くて、そこに本当にゾクゾクしました。
でも、最後の一言を思うと、やっぱりちょっと加賀谷と出会って理解されて、見せなかっただけで揺らぎはあったのかな。
なんせもう、とんでもない役でした。
そして、辰巳くん。
去年出会った辰巳くん演じる加賀谷学が本当に衝撃的であり、あぁまた新しい辰巳くんのお芝居に出会えたなぁと既に思っていたわけですが、
まさか今年、加賀谷の「怖さ」が増しているとは、思ってませんでした。
明らかに辰巳くんの、加賀谷という役へのアプローチの仕方、変わってたよね。
前半、犯人が富田のスマホを拾ってから稲葉麻美に行きつくまでを刑事たちに解説するシーンで、「そこがスマホなんだよ」っていうセリフ、ここの言い方が去年と大きく変わってて(去年結構インパクトある言い方だったのでかなり印象強く残ってた)、
そこで「あ、今年の加賀谷は違うんだ」って最初に気づかされました。
舞台版加賀谷は、アスペルガーという明確な設定があり、
基本的にセリフもほとんど去年とは変わってないんだけど、
なんか、目が違ったんだよな…。
去年の加賀谷は、すごい不安定な目をしてた印象があるんですよね。
視点が定まってないような、逆にものすごく一点集中してるような、不安定な心情が見てとれる目だったような気がするんですけど、
今年の加賀谷は怖かった。「冷徹」って感じだった。
去年から設定に変わりはないので、去年も、人と発想がズレていたり、他人を理解したり共感したりが出来なかったり、そういう部分は変わらないんだけど、
去年は、なんかそれが彼の心の不安定さを生んでいるのかなっていう気がしてて、
だからところどころ見ていて切なくなったりもしたし、助けてあげたいなって思ったりもしたけど、今年の加賀谷は…あんまりそういう感じがなかった。
語彙力無くて申し訳ないけど、とにかくもう、怖かったです。
だからこそ、個人的に今年の加賀谷に唯一グッと心持っていかれるのが、
「僕は僕を好きになってくれる人が好きです。しかし、そんな人がいません」
っていうセリフだったんですよね。去年は、このセリフ含め、もうあと何ヶ所か、そういうのがあったように思うんですけど。
今年はこのセリフの1回だけ、ギュッと切なくなる感じがしました。
加賀谷の心の深層かな、って感じがして。
セリフとかシーンでは、あるんですよね。加賀谷の心の中がわかりそうなとこ。
後藤刑事の言ったことを受け、ハチバンのことを理解するべき人間は自分だ、って思うところとか、もうハンドルネームの友だちはいらない、って言うところとか。
でもなんかなぁ…目が冷たかったです。まさかあんなに変わってるとは思わなかったなぁ。
よくわからんところでちょっと笑うのとかも。怖いと言うか狂ってる感あったし。そういうのも去年はあんまなかったような気がします。多分。
クライマックスの、ハチバンがMacの操作をまくしたてるシーンで、パスワードがハチバンからのメッセージというかカギになるところも、去年は聞いてる内に意味に気づいた加賀谷は「ハッ」としたリアクションが少しあったような気がするけど、今年の加賀谷は「ハイハイ、でしょうね」って感じの反応だったもんなぁ。(私にはそう見えたという話)
最後、小此木刑事が飛び込んできて、ハチバンが本部長室に起こってることを話すシーンも、聞きながら既に加賀谷の手はキーボードの上を滑るような動きになっていて、ちょっと薄ら笑いでめっちゃ怖かった。
去年どうだったかハッキリは覚えてないけど…どっちかと言うとやられた事に苛立ちを覚えているような表現だったような気がするんですけどね。
全体的に、加賀谷が何を考えているのかわからない感が凄かったです。怖かったです。(何回言うねん)
あとこれは、去年もそうだった気もするけど、度々、まばたき全然しなくなる時間があるしね。
えっまばたきしてない!?って確認しようとして自分の目がカピカピになったわ、何回も。笑
そんな感じでした。
実際、今年のパンフに去年の舞台写真載ってたけど、今年に比べてなんかもうちょっと目が、きゅるきゅるしてる感じがするもん。
きゅるきゅるしてるっていう表現で正しいのかわからんけど。笑
もうちょっと純粋そうな目と言うか、切なそうなところは切なそうってわかる目をしてたし、そうじゃないとこは…きゅるってしてた。(結局)
今年はね…基本的に冷たかったですね。
あんまり他でそういう辰巳くんのお芝居というか役って私は観たことなかったので、新鮮でした。
でも去年は去年で、あんな目をする辰巳くん初めて観た!って鳥肌立ったし、他の役とは目が違う!って思ったはずなんですよ…だからなんかもう、加賀谷感が増したというか、シンプルにめちゃくちゃパワーアップしたんだろうなって思ってる。
ただ更に「怖い」加賀谷を観ることになるとは思ってなかったので、本当にビックリしました。
でも、辰巳くんが「怖さ」を出したかったのかはちょっと不明なんですけどね…というかちょっと違うのかなぁって千穐楽後のラインライブを見て思った。
孤独感とか、そういう事かも知れないなぁ。
でも、劇中の加賀谷は間違いなく心が孤独だと私は思ってるんだけど、セリフの中に「周りに色んな人がいるからなんとかなってるけどな」って言うのがあるので、わざわざ口にするということは孤独を感じてるわけじゃないのかな。
んー。難しい。
辰巳くんのお芝居の幅とか、技量には、本当に毎回驚かされます。
あと余談ですが、初見の日は、いやパーマさすがにやりすぎやろって思ったけど、観る回数重ねるごとに目が慣れていったの自分でもちょっと面白かった。笑
ストーリーに関しては、去年そこまで深く観れてなくて気づかなかったけど、なんか今年は気になるな…ってこともあったりして、逆に引っかかっちゃったこととかもありましたけどね。
一番大きなのは、稲葉麻美と山本美奈代の関係性。
原作がどうかは知りませんが、映画は、麻美の方が明るくて美奈代が内気な性格で、麻美が美奈代の名前を利用して勝手に闇金に借金して、その取り立てに苦しんだことを一番大きな理由として、麻美が償いのために美奈代の名前で死ぬことを選んだために、美奈代は麻美として生きて行くことにしたわけですが、
舞台版では、まず性格が真逆で、AVに出て個人情報が洩れて苦しんだのが美奈代自身なので、麻美が美奈代の身代わりに死ぬ選択肢を選ぶ理由が弱くて…。
麻美が引きこもりになり、その生活を美奈代が支えなければならなかったというのはあるかも知れないけどそれだけで、映画は麻美が美奈代を苦しめた明確な理由があるので、麻美が償うのわかるんだけど、舞台版はそこが弱かったので、
つまり何が言いたいかというと、現在の麻美(本当は美奈代)に対する同情の心があんまり生まれないので、身分を偽って生きてきた気持ちに共感も理解もあまり出来ず、それを支えて生きていこう!という富田の心情にもイマイチ感情移入出来なかったんですよね。
生活に困窮してという理由ではあるけれど、お金のためにAVに出ると言うバカな選択をしたのは美奈代自身なのに、本物の麻美に助けられて、のうのうと生きてきた感が否めなかった。
これは映画版を知ってしまってるからこその弊害だったのかも知れないな~。
映画版では、本当のことを隠して生きて来た現在の麻美も、相当辛かったよね…って思えたという記憶があったからこそ、舞台版で「ん?」って思ってしまいました。
もう、でもこれは私がいつも直面する原作摂取問題とは別で、この舞台が決まるずっと前、普通に映画館でやっていた時に観てしまっているので、どうにもならない話なんですけど。
映画版と舞台版に違いが必要だったのかな…。麻美と美奈代の生死の関係性は一緒なのに、性格が逆だったらそういう違和感は出てきちゃうよね…。
まぁお陰で私としては麻美と富田のことに感情を持って行かれることなく、麻美はシンプルにハチバンの気持ちを揺るがせた要素として存在して、加賀谷とハチバンのぶつかり合いに集中出来たので、良かったのかも知れませんけど。
他に気になったのは細かいネタ的なことで、本筋には関係無いので別に良いんですけどね。
やめるって約束したのに競馬で20万以上使う富田と結婚するなんて、やめた方が良いよ、って麻美に思ったり、
武井の2人きりになる誘いには嫌悪感示して拒むくせに、美味しい食事とワインはちゃっかりごちそうになって、笑顔で「ごちそうさまでした♪」って帰る女はちょっと好きになれないわ、って思ったりとか。笑
そんなんもありました。
いやぁ、まぁそんなことはさておき、とにかく、恐ろしい作品でした。
わかってたのに…去年観たから、行く前からわかってたのに…あんなに更に恐ろしくなってるなんて…。
ストーリーの恐ろしさは、さっきも書いたけど別に良いんです。そんな喰らってないんです。
ただもう、辰巳くんと浜中文ちゃんの、お芝居のぶつかり合いが、セリフの応酬とかそういうレベルのことじゃなくて、熱と熱のぶつかり合いから生まれるものが、壮絶だったし、
更に他のキャストさんたちも全員がものすごい熱量でぶつかりあってるから、もう、劇場内が爆発してました。
怖かった。ゾクゾクした。最高でした。
「役を生きる」ということをまざまざと見せつけてくれた辰巳くん、浜中文ちゃん、そして全キャストの皆さん、最高でした。
こういう種類の演劇体験を、久々に出来て、私はとても幸せでした。
この作品は、セットもすごくて、公式ツイッターとかに写真上がってるけど、真っ白なんですよね。
真っ白で、あるのは白いイスと白い机。
そして壁が、スクリーンになったり、プロジェクションマッピングで扉になったり。
あとは照明の明暗や色味で、取調室になったり、登場人物の誰かの家になったり。
とてもシンプルで、それがまた、ゾクゾク感も増すし、演劇の凄さを体感させられるものでもあったなって思います。
そして、エンディングというかカーテンコールというか、後ろにキャストさんの名前が出て、順番に再登場されるところも、みなさん世界観そのままに、真顔というか無表情で出て来るので、最後までゾクゾクしたまま終わるんですが、その後の、トークが…。笑
私入った4回のうち2回スペシャルカテコ回だったし、千穐楽もあったので、キャストさんたちのお話たくさん聞けたわけなんですが、
いやもう、打って変わってわきあいあいの温かくて楽しいカンパニーだってことがとてもよくわかるカテコだったので、素敵なカンパニーの中に辰巳くんがいて良かったなぁって気持ちもあるけど、落差についていくの大変だった。笑
特に、麻美と武井のフランス料理店のシーン、一旦店の中に入る体で扉の中に武井役の三浦さんが引っ込むんですが、その中で行われてた浜中文ちゃん・原田さんを筆頭にしたコントの話が面白すぎて。笑
公式ツイッターで「お客様に見えない裏側で、後藤刑事によく似た人が店員さんとして働いています。たまにハチバンにそっくりなアルバイトさんが働いていることも…」って呟かれたことがあって、私の観劇日より前のツイートだったので、
実際観劇行った時、このシーン注目して観てたけど全然意味わからなくて、カテコで聞いてそういうことか!と。
本当に全く見えないセット裏で行われてた、浜中文ちゃんがオーナーで原田さんがシェフのミニコントでした。
次第によっちゃん(山田良明さん)が会長になったり、北村由海さんが会長の娘になったり登場人物が増えていたようで…楽しそうなカンパニーで何よりでした。笑
そしておそらくステージ上にほぼずっといるから上演中の時間はそういうのにあんまり参加出来なかったであろう辰巳くん…ずっと気を張りっぱなしで大変だっただろうな。笑
気を張ってると言えば、千穐楽公演、最後の最後で原田さん演じる後藤刑事が取調室を出て行くところ、怒りに任せて扉を締めたらドアノブが外れてハチバンの足元まで転がっていって、私色々感極まっている時だったので笑ったり泣いたり感情の迷子になったんですが、
まだその扉を開けて出て行くシーンが辰巳くんにだけ残ってて、でも辰巳くんは前向いてるから、大丈夫?ノブ取れたの気づいてる?振り返ってビックリしない?ってのと、扉ちゃんと開く?って心配になったんですけど、
平然と歩いていって出て行ったので、あ~良かったって思ってたら、
カテコで、やっぱり加賀谷に集中してたから全然気づいてなくて、扉の前で「えっ!」ってなったって言ってて、結構ノブ転がった時、コロコロ音もしてたんだけど、やっぱり集中力すごいなって思ったし、ビックリしたのに一瞬たりとも止まらずに平然と出て行った演技力もすごかったなって思いました。だって気づいてなかったのなら相当ビックリしたと思うもん。
でもあの扉、ステージ側から見て奥に向かって押すタイプで良かったよね…手前に引くタイプだったら開かなくてアウトだったよね。笑
他にも色々あって、カテコでは相当笑わせてもらいました。
そんな、シリアスで恐ろしい演技を見せてくれる、とても暖かくて楽しいカンパニーでした。
昨年春から夏にかけて、コロナ禍で打撃を受けた演劇界にとてもとても心を痛め、今も状況は大して変わりませんが、あの時は本当に、いち観客でしかない私ですら心を病み、生気のない生活をしてしまうくらい落ち込みました。
その要因となった作品はたくさんありましたが、中でも私に1番影響を与えたのがこの「スマホを落としただけなのに」でした。
1年前、無事に幕が開き、ホッとしたのも束の間、途中で断ち切られてしまった公演日程。
幻となってしまった千穐楽。
この作品に関してもチケットを持っていた公演がいくつか無くなりましたが、ただ、行けた公演もあったので、昨年の上演も観てはいるんです。
なので、観たかったのに1度も観られないままになってしまった人に比べたら、小さいダメージだったのかも知れない。
ただ、この作品の持つ、あの空気感を知ってしまったからこそ。
カンパニーの皆さんの覚悟に、触れてしまったからこそ。
まだまだ手探り状態だった中、必死に感染対策をして下さっていたスタッフさんたちを見てしまったからこそ。
それがぶった斬られてしまったことが、とても辛くて悲しくて、夏になってもフと思い出せば涙が出てくるくらい引きずりました。
アンコール上演が発表された時は、比べるものじゃないのかも知れませんが、正直どの作品の発表より嬉しかったし震えたし泣きました。
他の延期公演の上演も全部そうですが、複数の事務所に所属する俳優さんたち、スタッフさんたちが集結するスケジュールは絶対に簡単に組めないし、劇場だって何年も先まで決まってるって聞くから押さえるの大変だろうし、
全く上演出来ずに「延期」を明言した作品とは少し状況も違ったので、「いつか」を心から願ってはいたけど、こんなに早くやってもらえるとは思っていませんでした。
前回の中止が決まって割とすぐこの話があったとは言ってましたが、たった1年先のスケジュールよく組めたよなぁって感じです(まぁお陰で辰巳くんはトンデモスケジュールでしたけど笑)
大阪公演に関しては、前回完全中止になってしまった大阪から今年はスタートしてくれるっていう粋な計らいが(たまたまかも知れないけど)私はとても嬉しかったし、
今年のも去年のも大阪も行く予定にしていたし、
何よりもこの作品を演じる場所を彼らがまた奪われてしまったことが、本当に本当に悔しくて仕方ないのですが…。
ひとまず…ひとまずね。
去年は迎えることが出来なかった「千穐楽」を、今年迎えられたことが、本当に本当に嬉しかったです。
今年の千穐楽で、伴ねぇさん(伴美奈子さん)がおっしゃってましたが、「千穐楽おめでとう」と言えることがこんなに幸せで、本当は奇跡のように尊いことだなんて、こんなご時世になるまで知りませんでした。(もちろん「初日おめでとう」もですけど)
千穐楽公演、私入ってまして、しかもまさかの最前列センター寄りというとてもありがたいお席で(チケット届いた時は目ん玉飛び出た)、その座席のせいもあったかも知れませんが、
もう本編の終盤、最後の加賀谷、ハチバン、後藤刑事の取調室のシーン辺りからずっと、もう終わってしまうという寂しさと、もう間もなく、とうとう千穐楽公演を終えられるんだという感慨深さでものすごく昂ってしまい、ずっと半泣きで観ていて、
さっき書いたエンディングの各キャストさんが順番に登場するシーンからカテコ終わるまでの長い時間は、ずっとグズグズ泣きながら観る結果になってしまいました。
皆さんの顔、そして辰巳くんの顔を見ていても泣けてくるし、1人ずつの挨拶でも、去年の悔しさや今年の喜びに誰かが触れる度に涙が出て止まりませんでした。
私の涙のピークは、エンディングで辰巳くんが登場した時と、原田さんが教えてくれた裏話と、辰巳くんの挨拶でした。
原田さんの裏話は、千穐楽前夜、グループラインに辰巳くんが「みんなを愛してる」って送ってきてくれたって話で、それを辰巳くんがニコニコしながら照れて恥ずかしそうに聞いてる姿にめっちゃ泣けてきたし、
その話の時、原田さん、「演劇を愛する人、辰巳雄大くん」って言ってくださったのもめちゃくちゃ嬉しかったです。
辰巳くんの挨拶では、大阪公演が引っかかるって話してて、「諦めがめちゃくちゃ悪いタイプなんで」「諦め悪くなかったらジャニーズここまでやれてない」「馬鹿なフリして大阪公演を目標に色んな仕事やっていきたい」って言うから…「Scandalousぅぅぅ」ってなって泣きました。
あと、「個人の価値観を問われる時がたくさんあると思いますけど、あなたが主役の人生だとこの作品を通して改めて思いました」「絶対に皆さんは間違っていないという勝手な思いがあります」っていうお話があって、今回の言葉はちょっと抽象的だったけど、多分、ENTAの配信の時の「(観に来るという選択をしたことに対して)周りから色々言われるかも知れないけど貴方が考えて出した答えは間違ってない」っていう言葉に通ずるものがあるのかなって思って、
私、ENTAの時これを言ってくれた辰巳くんに本当に救われたので(観たのは配信だったけど私も別の公演行ったから)、フとそれを思い出したし、
ENTA以降も、ありがたいことに行きたい現場が多いお陰で、色んな事に頭を悩ませることがずーっと続いて、本当にしんどい気持ちになることもあるけど、
辰巳くんがステージの上からあの言葉を発信してくれるお陰で、少し心が救われる気がします。
最大限の対策はして行っているつもりだし、誰とも会わない会話もしない、外食もお茶も一切しない、観劇時間以外はホテルからも一歩も出ない、とか、私は私でやれることをやっているつもりだけど、
それでも今の状況で、正直胸を張って現場には行けないというか、身近な人たちへの後ろめたい気持ちは絶対消えない、っていうのは、行くたび毎回あって、
なら行くなよって思われるんだろうけど、その現場はそこにしかないから、どうしても出来る限りは行きたいって思っちゃって、行く選択をしてるんだけど、
辰巳くんの言葉を聞いて、「そうだよね私の人生だもんね好きにして良いよねー!」って開き直ったらホントそこで終わりだと思うんだけど笑、
私は、心が救われつつ、「私のしたことは間違ってないって胸を張れるように、選んだ選択肢の中でもやれることを最大限やろう」って、気が引き締まる思いもするので、
こういう発信は本当にありがたいなって思うし、
このご時世の中で、エンターテインメントに携わるお仕事をしてる人たちも、本当に価値観問われて辛いこといっぱいあるだろうなって思う中で、
発信の仕方とか言葉ってほんとに人それぞれだなーって感じるんだけど、
辰巳くんがこれまで選んできた色んな言葉の中に、この「皆さんは間違ってない」っていう言葉があるの本当に嬉しいし、ありがたいし、
さっきも書いたけどその言葉に対して手放しに「そうだよねー!」ってお気楽になるんじゃなくて、
そういう風に言ってくれる辰巳くんのファンとして、相応しい行動をして行きたいなって、思います。
ちょっとコロナの方に話が行ってしまったけど、
キャストさんおひとりおひとりが発して下さった全ての言葉を含め、中身の濃い、幸せに溢れる、千穐楽のカーテンコールでした。
めちゃくちゃ泣いたけどめちゃくちゃ幸せでした。
あの場に居合わせられて良かったし、去年あんなに心を痛めたこともあったので、直接見届けることが出来て本当に良かったです。
正直、作品としては、もっと何回も何回も観たい!とか、ずっと観続けたい!というような内容の作品ではなくて(シリアスでしんどいし笑)、
でもあのゾクゾクする演劇体験っていうのはどこでも出来るわけじゃないから、やっぱりまた体験はしたいし、
あと、やっぱり大阪公演悔しいし、このお芝居の熱をもっともっとたくさんの人に届けて欲しいなって思うので、
今回のはアンコール上演、次からが再演となるみたいなので、ぜひ再演してもらえるよう願いたいと思います。
浜中文ちゃんは、もう1回この台本イチから覚えるのは嫌やって言ってたので、完全に体から抜けてしまう前に、ぜひ!笑
またあの爆発的なエネルギーを放つカンパニーの皆さんが揃ったところに、会いに行けたら良いなぁ。
★私的観劇公演★
2021年6月12日 昼・夜公演
13日 夜公演
14日 昼公演
全て日本青年館ホールにて
私のブログはいつもぐちゃぐちゃですが、史上最高に支離滅裂なものが出来上がった気がします。
どうがんばっても文章と文章を上手く繋げられなかった…。
作品がね、心が混乱する作品なので仕方ないですよね。(無理やり正当化)
2020年版の映像です。
上は今年版、下は去年版のパンフと上演台本。
そういえばグッズで思い出したけど、今年の、開場時間までの1時間をグッズ販売の時間とし、開場中や終演後は一切販売しないというやり方、コロナ対策としては結局どうだったんだろうな…。
人が密集しないためだったのかも知れないけど、結果的に、グッズを買ったあと開場するまで、本来より早い時間から会場周辺に人が留まる事態が発生してて、かえって良くなかったような気がしますね…。
開場中にロビーで、グッズが買えないなんて聞いてない!ってスタッフさんにめっちゃ怒ってる人も見たし。
確かに、公式サイトやツイッターって当然にように私は見るけど、来場者全員が必ず事前にチェックして来るとは限らんもんなぁ。
対策も、なかなか色々試行錯誤で大変ですね。
会場内アナウンスで「マスクをお持ちで無い方は咳エチケットにご配慮ください(咳をする時は袖で口を押えてみたいなやつ)」って感じのが流れてたのはだいぶビックリしましたけどね。
マスクしてなくても入れるん!?ってなりましたもんね。公式サイトには、必ず着用って書いてあったし、実際マスクしてない人はさすがに見てないし良いんですけど(そのマスクどうなんって人はどの現場行ってもおるけど)
あのアナウンスは謎でした。ドキドキしたわ…。
客席入ってからも隣の人とぺちゃくちゃ喋る人は相変わらずおるし(本人たちは小声で喋ってるつもりでも周りには響いてます。今は気持ちがシビアなんで余計です。すぐ隣とか真後ろとかでそれされると、本当は怒鳴りつけたくなるぐらいの気持ちになるけど必死で抑えてます。外で喋り終わってから入ってきて欲しい)、なんか、ギスギスした気持ちを持たずに現場に行ける日が早く来て欲しいなぁって思います。
すいません一部めっちゃしんどい思いした公演があったので最後にちょっとグチりました。