いつもそこにあるもの

好きな人たちを好きなように応援していたいと願うただのひねくれオタク。そんな私の主に現場の記録とか彼らに対する思いとか。良い感情も悪い感情も残します。

”生きる”について考える - 「優秀病棟 素通り科」感想

福田悠太主演 山田ジャパン公演「優秀病棟 素通り科」

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行けて良かったなぁと思っている。

 

 

緊急事態宣言下での東京遠征。

めちゃくちゃ悩みました。悩んで行きました。

行ったことが正しかったとは思ってない。

でも間違っていたとも思ってない。

結果論でしかないけど、感染することもなかったし、公演自体も無事幕を下ろしたから言えるんだけども。

この作品を観劇したことは間違いなく私の人生の糧のひとつになった。

状況が状況だったから、正しかったとも間違ってたとも言えないけど、行って良かったとは思っている。

配信も3公演もあって、しかも配信は、こちら側が出来れば観たいと思っている、初日・中日・千穐楽を押さえてくれるという夢のような日程でありがたかったです。(福ちゃん嫌だって言ってたけど)(そりゃ見られる側は嫌な日程よね笑)

 

 

一言で言うと、とても「難しい」作品でした。

難しい、というか、放出されるメッセージというかエネルギーが多岐に渡っていて、私は全てを受け止めたり理解したりし切れている自信は無い、という感じ。

 

ただとても刺さる作品でした。

何気ない一言のセリフも、ストーリー上大事なセリフも、とても深くて、考えさせられることだらけでした。

私は飯塚ほどは人生上手くいってはいないけど、ただ別に不幸でも無い、なんてことない毎日で、

日々不満に思うことももちろん色々あるけど、多分周りから見たら不憫に思われることも同情されることも何も無いと思う。

だからこそ、序盤から飛び降りを図った飯塚が、その理由が「無い」と言ったことにひどく共感したし刺さりまくった。

 

「火災が起こった高層ビルの屋上のビアガーデン」

なんて適切な表現だろうと思った。ゾクゾクした。

幸せの土台が不安定。

劇中の回想シーンというか、再現シーンを見ていると、喜久枝の、「幸せじゃねぇか!!」という苛立ちにも共感したし笑、飯塚は私よりよっぽど充実した日常を送っていたけれど、

今回の題材が、よくありがちな「人によって何が幸せかなんて違うから他人にはわかんないよね~」って事ではなく、幸せなんだけど、満たされてるんだけど、その土台が不安定でそれを失うのが怖いから命を絶とうと思った、ということならば、

私には新しいテーマだったし、でもその方が共感するし、頭をガンっと殴られたような気持ちでした。

 

こういう重要なセリフもそうなんだけど、

冒頭の松坂の「慣れた人って注意事項が注意する対象じゃ無くなる」だとか、クニさんと町田ちゃんの会話の「歩きスマホしてる人に合わせて歩きスマホしてない人も歩くのが遅くなってる」だとか、なんか忘れられないセリフが結構あったんだよね。

深く考えさせられるというか。

もちろん共感出来ないものもあったけど。「花屋に並んでいるのは花の死体」だとかね。一瞬「うわっ、そうか、すごい表現だな」って思ったけど、色々考えた結果、私は花屋の花は死んでるとは思ってない。

だけど劇中に出て来たコロンビアの花畑みたいなところが花の本来の姿であれば、死体という考え方があるのも頷けるし、色んな考え方があるけどね。

 

飯塚が自分の花の貿易の仕事について「案外残酷でクレバーな仕事ですよ」って言ってた言葉にドキッとしたけど、なんか色々考えてると、働くとか、生きることって、割とどれも残酷でクレバーだよなって思います。

「クレバー」の意味については捉え方次第なところありますが、飯塚の言い方と文脈的に私が受け取った意味で言えばね。

 

なんかとにかく、刺さる言葉がとても多い作品でした。

刺さる=共感、ばかりでは無いですが。深く考える言葉だらけだった。

 

あと、飯塚の幼少期の思い出。

クイズ本に出て来た挿絵の紳士が怖くてたまらなかった話。

あぁ、これも、わかるなぁ、って。

子どもの時って、大人や周りには一切理解されないけどすごく恐怖に感じる物や事があって、そんなこと大人になって基本的には忘れているけど、その恐怖の感覚だけは記憶の片隅にこびりついている。

内容は詳しく思い出せない場合もあるけど、あぁいう子ども独特の感性によって生まれた恐怖感って経験ある人きっと多いんだろうなって思う。

だから後半のシーンでコートを着た紳士が一瞬現れた時は怖くて、すごくゾクゾクする瞬間だったな。

 

 

ちなみに日常(飯塚的には「何気ない」喜久枝的には「幸せな」)のシーンは最高に楽しみました。

いやもう飯塚良い男過ぎて。福ちゃんイケメン過ぎて。

あんな上司の下で働きたい。

特に会社のシーンは、これもちょっと違う方向で刺さる言葉多かったです。

「言われたことに反発してる内は子どもと一緒」

「不満は誰にでも言えるの。要はどう実現させるかだろ」

「自分の上司にトドメ刺してどうするんだよ。一緒に会社盛り立てる仲間だろ」

とか。なんかもう、めっちゃ反省した。笑

仕事は出来る、上司への対応も完璧、同僚や部下からも信頼されてる、最高にカッコいいですよね。

花の貿易の会社って言ってたけど、あれ結局、貿易会社にしたのも飯塚ってことよね!?

しかも32歳で部長よ!?素晴らしすぎない?

(ずっと何歳の設定なんだろ…と思ってたらパンフに福ちゃんより2歳下って書いててビックリした)

 

で、家庭のシーン。

あんな完璧な旦那おる!?最高過ぎた。福ちゃんイケメン過ぎて。(2回目)

あんな人と結婚したい…。理想の夫過ぎる。

ヒートテック」とか「Netflix」とか固有名詞バンバン出すからドキドキしたけどね。配信大丈夫なの?とか。笑

あと、まさかの突然の上裸には驚いた。

しかもガリガリのバッキバキで余計ビックリしたよね。

DUeTの3月号でも上半身出てたけど、それよりだいぶ肉落ちてる感じがしたな…でも取材時期と公演時期そんなに離れてないと思うんだよねぇ。福ちゃん痩せてないって言ってたけどやっぱり舞台で痩せたんじゃないかなぁ。角度の問題もあるかも知れないけど。

 

いやほんと良い男だったなぁ…。キュンキュンしました。

子ども時代のシーンはもう炸裂してましたけどね。笑

あと福ちゃん細いし手足長すぎて、半そで短パンはダメ。見れない。上裸より見れない。悪い方の意味でしんどい。笑

与座さん森さんの方が劇中のセリフにもあったけど確かに子どもっぽかったしホッとした。笑

あのシーンのせいで公演が数分のびていくの、あぁもう福ちゃんだなぁって思いました。ふざけ倒していた。笑

あと、カテコでスタオベ起こった時に、あさこさんが「座って」って言ったらステージ上で真っ先に座る文化(文化)しっかり持ち込んでてしかも伝染してて笑った。さすがです。笑

 

まぁそんなことは置いておいて、

福ちゃんのお芝居の緩急の付け方が元々とても好きなんだけど、

今回も、「飛び降りを図った飯塚」の部分のお芝居はとても陰の空気が漂っていて、「仕事出来る男、良い夫、ふざけ倒す子ども(笑)」のシーンもあって、そしてラストの方、苦しみのたうち回り、そしてそこから少し解放される飯塚、色んな福ちゃんのお芝居があって、とても楽しませてもらいました。

「理由」を探して急な大音量の音楽と共にセットがグルグル回るシーン、心の中をぐちゃぐちゃに掻き回されているようで怖くて苦しかったし、その中でもがく福ちゃん見てたら息が出来なかったし涙が出て止まらなかった。

その後の、喜久枝と言い合いになるシーンも、福ちゃんの熱量に圧倒されました。ゾクゾクした。

 

 

 

でまぁ、結論。

私にとって「生きる」とは何か、「死」とは何か、散々考えさせられる作品ではありましたが、別に答えは出ていません。

作品自体も、すごく元気づけられた!明日からがんばって生きていこう!!って明るく前向きに思えるほどのものでは、私にとっては無かった。

喜久枝の最後の方の、「身近な誰かと笑って、ほんの少し酔っ払えば、いけるから」というセリフにも、「そうかな…」って思っている自分がいたりする。

ただ、そのもうちょっと前の、「幸せのバリエーション舐めんな!」というセリフはぐっさり刺さったし、

「あんたの命はあんたに関わる全員のもんでしょ、だから価値が高いのよ」「あんたの知らないあんたの時間が流れてる」というセリフも、深く考えさせられた。

呆然と坂を登っていく飯塚の周りで、彼の知らない彼の時間が流れているあの演出は、とても素敵でした。

山田さんが言っていた、「真下を向いていたとしたら、もうちょっと斜めにルックアップできるような作品」という表現は私にとってはピッタリで、

今、私は全力で生きてないかもな、って、じゃあもうちょっと「生きること」について向き合ってみよう、って、そう思える作品でした。

 

というかまぁ、実際この作品を観ての答えというのが出し切れてなくて、まだ時々思い出してはグルグル考えてしまう作品で、

でもなんかそういうのって、私の大好きな演劇体験の1つなので、体感出来て良かったなって思います。

あと、千穐楽後、山田さんがツイッターで、台本の最後の1ページを公開して下さって、それ読めたお陰で少しだけ心が軽くなったというか、答え探して目の前にかかっていた靄が少し消えたのがとても良かった。

 

また1つ忘れられない作品に出会ってしまいました。

出会わせてくれた福ちゃんに感謝。

福ちゃんがパンフの対談で、「ジャニーズとして、アイドル活動を通して自分たちを愛してくれる人の中で、演劇を観るのではなく、自分たちを見る目的で劇場に足を運んでくれる人がいる。それはありがたいけど、あまり良くないんじゃないかとも思う。お芝居を純粋に楽しむ一観客になってほしい」(要約)って言ってて、もうそれってまさに私がひしひしと感じていたことそのもので、ちょっとドキドキした。

ふぉ~ゆ~に出会って彼らの仕事を追うようになってから、私、作品の観方変わったなって感じてる部分があって、それは私の中では福ちゃんの求める観客の感覚に近づけている気がするって意味なんですよね。

そのせいで私の中の「楽しめる作品の間口」が狭まってしまった感覚もあるから、良いか悪いかわかんないな、ってずっと思ってたけど、福ちゃんがそう求めてくれるならそれでいっかって思えた。

こういうことって言いたくても言える場面限られると思うし、そういう意味で、この作品に出会えたことに重ねて、彼のこの言葉がこの作品のパンフで読めたことにも感謝です。

 

あと、千穐楽のカテコ、私が知る限りでは初めて、福ちゃんしっかり喋ってくれる時間があったんだけど、そこで彼が語ってくれた「運命の只中」の話がとても素敵でした。

 

普通運命は、過ぎてから「あの時間は運命だったな」って振り返るものだけど、この作品の話が来た時から「運命になる」って確信があって、台本もらって、稽古してる間、ずっと「やっぱり、やっぱり」って思っていて、上演期間中ずっと「運命の只中」にいれた気がして幸せだった。「運命の只中」にいることを実感しながらお芝居出来るようになったから、呼ばれて良かったと思った。

 

という話。

コメディで死生観を扱うという、シリアスなストーリーより何倍も難しそうな作品で、福ちゃんすごい挑戦して闘ってる感じがしたから、その中でこんな風に感じられる福ちゃんがとても素敵だと思ったし、それを聞かせてくれたことが本当に嬉しくて画面の前で泣きました。

良い話した感が多分照れくさくなっちゃって、「こういう話しとくとSNSに書いてもらえる」とか最後に言っちゃったから(そういうとこ福ちゃん笑)、あさこさんに「やっぱりか!どっちかなと思って聞いてたけどやっぱりちょっとチョケたよね!」って言われてしまったけど、

観てる側には十分伝わったし、最後の一言は別にして、全然ふざけるつもりなく話してくれてるのも伝わってきました。

これ、トリプルカテコでのお話で、多分ダブルカテコで終わりのつもりで一旦配信切れて終了画面出たんだけど、スタッフさんが戻してくれたお陰で聞けたんですよね。

本当に、あの時配信続けて下さったことにも感謝してます。

 

定期的にこういう作品に出会えている私は幸せだな。

 

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 ★私的観劇公演★

【劇場】

2021年1月25日 昼公演・夜公演

【配信】

2021年1月20日・23日・27日

 

 

余談ですが、千穐楽後に更新された出演者の菅野姉妹さんのブログを読んで、本当にビックリしました。

言ってしまえばわき役の1人である潮田について、とても深く掘り下げて作り込んでいたことが紹介されてる内容だったので。

この作品だけでなく、どの役者さんも、ある程度そういうこともしているんだろうなぁとは思っていたけど、ここまでとは思ってなかった。

彼女が考えていた内容は言葉となって劇中に表れることはないけど、彼女の存在・立ち振る舞い・空気にきっと表れていたんだろうなぁって。

きっとあんまり詳しくこちらには知らされないだけで、舞台に立つ人たちはみんなこうやって役を作ってるんだよね。

今後もきっと色んな演劇を観ていくであろう中で、これが知れたのはとても良かったです。

 

『 優秀病棟 素通り科 』 | ひとりだって姉妹!

 

 

あともう1個、ほんとにめっちゃ余談ですが、与座さん、私オンエアバトル世代で当時ホーム・チームめちゃくちゃ好きだったので、吉本の関西の劇場しか行ってなかったから生で観た事は無かったけど、こんなタイミングで会えるなんて!嬉しかった~。

キャストに名前見た時から、「ざざざざ、ざざざざ、よ~ざ~~」(火サスのメロディ)ってギャグが頭離れなかったです。笑

クニさん役の与座さんも子ども役の与座さんも安定に面白くてめちゃ好きでした。

 

 


CUTT - Domino YJ ver. (Lyrics Video)

 


CUTT - しがらみHammock YJ ver. (Lyrics Video)

 

劇中歌の動画。

こんな風に舞台の音楽が後から聴けるのも初体験で嬉しかったし、制作についてブログで読めたのも初めてでありがたかった。

山田ジャパン「優秀病棟 素通り科」楽曲制作ノート – CUTTの"楽"ブログ

 

どちらの曲も好きだけど、どちらかというと「Domino」の方が、あの心も体もぐちゃぐちゃにかき混ぜられる感覚が蘇ってきてクセになって聴きたくなります。