いつもそこにあるもの

好きな人たちを好きなように応援していたいと願うただのひねくれオタク。そんな私の主に現場の記録とか彼らに対する思いとか。良い感情も悪い感情も残します。

Mogut~ハリネズミホテルへようこそ~ 感想

 塚田僚一主演

「Mogut ~ハリネズミホテルへようこそ~」

感想を綴ります。

 

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塚ちゃんの4年ぶり単独主演舞台。

4年前のサクラパパオーの時は、A.B.C-Zのファンになりたてで、絶妙なタイミングで観劇を逃したので、外部の舞台でお仕事をする塚ちゃんを観るのはこれが初めてでした。

 

 

塚ちゃんとても良かったです。

塚ちゃん本人が持っている天真爛漫さ、純粋さ、まっすぐさって、彼の魅力だから、彼のこと好きな人はきっとそこは好きな部分の一つである人多いと思うんだけど(もちろん私も)、それがモグーにもしっかり反映されていて、塚ちゃんにピッタリの役でした。

あの役は、A.B.C-Zの中で言えば絶対に塚ちゃんだったな、って思いました。

あと、身体能力の高さを発揮出来る部分がたくさんあって、あぁいうのはどう括れば良いのかな…アクロバットと言うよりは、新体操技って感じだけど、とってもキレイで、塚ちゃんのアクロバットや新体操の美しさと安定感が大好きなので、それが遺憾なく発揮されていて素晴らしかったです。

あとダンスにちょこちょこA.B.C-Zの振りを入れてくれる塚ちゃん。

ざえびとか、チートタイムとか結構ガッツリ入ってたけど、クスっとなれるシーンで嬉しかったです。

体操にしてもダンスにしても、嫌味が無いというか、媚びが無い感じが素敵だった。

ジャニーズが主演だからそういうの入れといたらファンの人たち喜ぶでしょ、っていうのが透けて見えると私は嫌悪感を感じがちなんだけど、今回も、特にダンスの振りに関しては勿論サービスなんだなってわかるのに、全然嫌味が無かったです。

塚ちゃんがやるからかも知れないなー。塚ちゃんの存在に嫌味が無いもんな。

ところどころ、音楽の流れるシーンで塚ちゃんが手拍子煽るんだけど、それも常にめちゃくちゃ可愛かったです。

 

と、まぁ、塚ちゃんに関しては何の不満も無くとっても大好きだったのですが…。

ストーリーとしては私は腑に落ちませんでした。残念ながら。

 

ただ、ものすごく色々深く考えた内容ではありました。

 

観劇より前に得ていた情報として、恐らく子ども向けのファンタジーな設定を用いて、差別について説く作品だろうな、と捉えてはいました。

そしてそれ自体に違和感は感じていなかったし、そのつもりで、それを普通に受け入れるつもりで観に行きました。

 

1回目は、ストーリー以前に演出の色々に疲れてしまって、んーーな感じで帰って来たんですけど、

それに慣れて2回目観劇した結果、内容に考えを向ける心の余裕が出来ました。

 

ここからは私の個人的な考えですが。

もちろん、「差別」は良くないです。これは私の中にも大前提としてある。

ただ、「差別」と「区別」って、紙一重なんですよね。これは前々から思っていたことだけど。

モグーは「差別も区別も必要ない!」って言ってたから、差別だろうが区別だろうが存在しちゃダメだと言いたいのかも知れないけど、私は「区別」を排除すべきとまでは思っていない。

 

ハリネズミハリネズミによるハリネズミのためのホテル。

それが「ハリネズミホテル」です。

前はそうじゃなかったけど、今はそうなんです。支配人が変わったので。

従業員はクビになるしミチュランガイドの星は落とすし、残念ながらこの変化で良い結果は何も生まれていないけど、でも、今経営者はハリネズミ専門のホテルを作っているのです。

そこにモグラが泊まれないのは差別なのか、区別なのか…。

劇中ではそれを差別として扱い、悪として扱います。

 

公的な機関とか、そういうところが種で差別してはいけないと思うけど、

私設のホテルの経営者が泊める客を選んでは…いけないのでしょうか。

ホテル側にもお客さまを選ぶ権利はあります。

私も同業種で働く人間なので、深く考え過ぎてしまった節はあるのですが…。

 

例えば、これは人間の世界にも当てはまる話ですが、ホテルには料金設定があります。

もちろんかかる経費と利益も鑑みた上で決められたものではあるけれど、ある程度ホテルの質やランクによって決められてる部分も絶対あって、この料金設定でお客さまをある程度選別します。

高級ホテルならなおさらですが、どうやったって、そこに泊まれる生活レベルの人と、そうじゃない人がいる。

それ自体は当たり前のことですが、じゃあこれを人は「差別」と呼びますか?と私は聞きたい。

収入が少なく、宿泊料が払えない人を受け入れないことを、誰も「差別」とは認識しないですよね?

(まぁ今回の作品の場合、ミチュランガイドのコスパの星も1つか2つだったので、このハリネズミホテルの質と料金は見合ってないようだったけどそこは一旦置いておいて)

 

私は、ハリネズミに特化したホテルだからハリネズミしか泊まれません、というのは、この料金設定による「区別」となんら変わりないような気がしました。

なぜなら、前半にあったシェフの「飛ぶもの、歩くもの、這うもの、地中を蠢くもの」が趣味嗜好や常識が違うのに、全部一緒にして快適なホテル空間が出来るとは思えない、という発言に、「なるほど、確かに」と思ったからです。

理にかなっている、と私は感じました。

 

ストーリーは、ハリネズミホテルがミチュランガイドでずっと5つ星だったのを2つまで落としてしまったことから始まり、支配人とシェフ(シェフは支配人に取り入るためでもあるけど)は、ハリネズミ専門にしたことの正当性を説き、ガイドへの不満を漏らしているので、星を落としたのはハリネズミ専門にしたからだと思っていたようですが、原因は恐らくそこでは無い。

料理の質を下げ、サービスの質を下げたところにどう考えても原因がある。

ミチュランガイドを作っているのがハリネズミなのかどうなのかという疑問はありますが、ハリネズミでなければ隠密(審査員)はホテルに泊まれてないと思うので、恐らくハリネズミなのだろうという仮定で考えると、支配人は、ハリネズミだけには満足してもらえるホテル作りをしなければならなかったのに、それを怠ったから星を落としただけの話になってくる。

しかし最終的に支配人は改心し、元通り色んな動物を受け入れるようになり、5つ星に戻るのも時間の問題、という一見ハッピーエンドな雰囲気に話は進みますが、別にハリネズミ専門のままでも質を向上させれば星は取れた可能性がある。

まぁホテルの評判を取り戻したのはモグーがハリネズミホテルのシェフとなり師匠のレシピを受け継いだお陰という筋書きではあったけど、師匠は現シェフが一番の弟子だと言っていたので、支配人とシェフが改心してがんばるだけでも問題(ガイドの星の)は解決したかも知れない。

となると、このストーリーの問題は「差別」ということでも無くなってくる。

というか、問題の中心が差別になったりホテルの質になったり、なんかブレブレだったことが引っかかって仕方がないんです。私。

 

あと、さっき塚ちゃんの役よかった!って言っといて何ですが、モグーのキャラクターもちょっとだけ受け入れられてない部分もあって。

モグー、平気で嘘ついてホテルに泊まろうとしたよね。

ハリネズミに扮してホテルに行って、名乗るまでは身分を偽ろうとまでは思ってなかったけど、たまたま予約していたハリネズミフランス国王と同じ名前だったことで勘違いされたのを良いことに、そのまま押し通そうとしたけど、

あれが、勘違いされてることには気づかずに「ハリネズミとして潜り込めた!」ぐらいの嘘だったら良かったんだけど、最終的に完全に確信犯で国王のフリしようとしたのがちょっとムリだった。

あと、支配人がモグーを知らないのは当然として、シェフがモグーを知らないのちょっと違和感だったよね。師匠はどっちも弟子だって言ってるのに一緒の厨房にいた期間無かったのかな。

 

で、一番受け入れられないのが支配人がミートパイを食べるまでのくだり。

ホテルのフレンチに納得いかない他国の国王、ラ・モグー2世が、匂いに惹かれてモグーの作ったミートパイを食べる。

とても美味しい。

それを支配人に食べてみろ、と言う。

支配人は「モグラの作った物なんか食べられない」と言って断る。

まぁそれは確かに差別と言えば差別なのかも知れませんが、その支配人に対する説得の仕方。

国王は、拷問されても死刑にされてもその信念を守るのか、という。

支配人は、食に関しては個人差や種別間の差があり、勧める方は良かれと思っても押し付けになることもある、と訴える。

私はその通りだと思った。

しかしなかなか折れない支配人に、ホテルの客としてワガママ言おうかな、権力行使して外交問題にしようかな、という。

これはもう、職権乱用というか、脅迫です。国王ともあろう人が。

そして最終的に、国王として食べろと命じると言い、みんなで「食ーえ!食ーえ!食ーえ!」と煽り、食べさせる。

結果、それを美味しいと感じた支配人は師匠にホテルに戻ってくれと頼み、モグーと一緒なら、という条件で師匠は戻ることを受け入れるわけだけど…。

この、支配人に食べさせるまでの流れ、特に「食ーえ!」コールは、ゾッとした。怖かった。

なんて暴力的なんだ。差別はダメなのに、国王が権力振りかざして言葉の暴力を振るうことは許されるのか。

原作が子ども向けの絵本だということを考えると、まぁある種、子ども特有の残酷で乱暴な解決の仕方かな、とも思ったけど、作ってるのは、大人だからなぁ…。

(原作も同じストーリー展開なのかは知らないけど)

 

あと、モグーは「5つ星の中でもトップクラス」だという「マカロンホテル」で働く優秀なシェフになったのに、モグーも一緒に働くなら、という条件を勝手に付ける師匠もどうかと思った。

モグーは師匠のアドバイスで世界中で料理の修行をして、マカロンホテルで働けるようになって、料理の腕が上がったから師匠にミートパイを食べてもらいたくて会いに来ただけで、ハリネズミホテルで働きたくて訪ねて来たわけではなかったのに…。

 

そして最終的にめでたしめでたしだけど、色んな動物が来るようになって、馬や羊も…って言ってて、人間のひざまでもない小さな小さなホテルに馬や羊!?やっぱりそれは種別間の差、出てこない?快適なホテル空間の提供出来るの?って思った…。

 

 

結論として、果たしてこのストーリーの中で起こっていた問題は本当に差別だったのか、案件です。私としては。

私自身が、「ハリネズミ専門のホテル」というところに「差別」は感じられなかったので、これ結局差別についての話なの?違うの??って思ってたら、

最後にモグーが「私には夢がある」って言い出したので、その言い回しを使うということは、あぁやっぱりそうなんだな、って思って、結果頭抱えた感じかな。

あの独白のようなシーン作りも…そこまでのストーリーが腑に落ちてないせいではあると思うけど、唐突すぎてポカーンとして、言いたいことはわかるけど、あんまり内容が響いて来なかった。

もっとモグーらしく訴えてくれたら良かったのにな、って思う。

 

まぁなんせ色々引っかかった原因は、私が同業種で働いているせいで深く考え過ぎてしまったことと、(お客は金さえ払えば何しても良いと思っている、というセリフには首取れそうなくらい頷きました超同意)

ハリネズミホテル」と「ミチュランガイド」という響きに発表時からキュンキュンし過ぎて、もうちょっとファンタジー感ある作品かと思ってたら違った、ってとこにあるかな。

まぁその後コメントとかビジュアルとか見て、そんなほっこりかわいい作品で無いことはわかってたはずなんですけどね。

 

 

 

そんな感想でした。

ただ、私がそう思ったからと言ってこの作品のメッセージは間違っているとか、ダメな作品だったとか思ってるわけじゃなくて、

常々言っているけど、舞台だけじゃなくて本でも映画でも、そこに描かれた内容に自分が納得したかどうかが作品の良し悪しに直結するとは思ってなくて、

何かを提示され、共感出来なかった時に、それについて色々考えて、私はこう思うな、っていう風に思考を巡らせることが創作物に触れる醍醐味だと思っているので、

そういうところに行けたってことは、舞台として良かったんだと思います。

もっと全然気持ちにハマらなくて、何だったんだあれは、とか漠然と思って終わる場合もある中で、この作品についてはすごくいっぱい考えたので面白い時間でした。

 

あとセットが良かったよね!セット転換全く無いんだけど、真ん中に太く斜めに立った1本の柱と、その上部にたくさん不規則に並んだ球体(実際はセットだから裏は平面の半球だけど)が、照明の色によって木になったりシャンデリアになったりするの、すごく面白かったです。

それと、後からインタビュー読んで知ったけど、ソーシャルディスタンスのために、演者さんみんな基本前向いて喋ってて、演者さん同士の物理的な絡みもほとんど無くて、そう言われてみればそうだったけど、観劇中は何の違和感もなく観てて、面白い演出だったなぁって思いました。

 

出演者さんたちも皆さんとっても素敵でした。

特に細見さんがカッコ良くて好きでした~。

辰巳さんと一緒にちょいちょい関西弁挟んでくるなぁと思ってたらお二人とも大阪出身だったんですね。笑

菅原りこちゃんは、「罪のない嘘」以来の再会!

あの時は役的に私があまり好きじゃなかったのもあって、すごい声の高い子って印象しか無かったけど、今回3役もやってて、色んな顔が観れて楽しかったです。

師匠役に関しては、1回目観た時は、おじさんの声出すのが、元々声高いからとてもしんどそうに聞こえて、これはおじさん設定じゃなきゃダメだったのかな…おじさんじゃないとダメだったとしたら、りこちゃんじゃないとダメだったのかな…って思ったけど、

ツイッターで「喉のケアしてるから全然大丈夫です!」的なこと書いてるの見かけて、それ見たからか2回目観劇した時は普通に観れました。

でもハリネズミの小さな女の子役のりこちゃんが一番おもしろかわいくて好きでした~。

 

1つだけ不満があるとすれば(これは本当に不満!笑)、

開演前にパンフ読んでたらすごろくみたいなページがあって、実際出演者の写真を切り取ってコマに出来るようにもなってたから、へぇ面白いなぁと思って読んだらストーリー全部わかってしまったのは、本当にやられた。

確かにちゃんと見ればページの上部には「STORY」とタイトルが打ってあるんだけど、そこには前もって知っていた、モグラのモグーがハリネズミホテルに行ったら大騒動になって…というところまでがすごろくとは別で文章で書かれていて、そこまでの知識で観劇するはずだったのに、

その下にあるすごろくのマスを読み進めて行ったら、ミートパイ作ってそれを王様が気に入ってくれて大団円を迎える、ということまで書かれていて、いやいやいや、それパンフに書いちゃダメでしょしかもこんなポップにすごろくみたいな形で…って思いました。

STORYというタイトルのページに、すごい文章量で何か書いてあったら「ネタバレになるかも!」って回避するけど、すごろく読んでラストまでわかっちゃうと思わんやん…。笑

お陰で観劇中のストーリー展開に何の驚きも意外性も無く、「ですよね」「ですよね」って思いながら観るハメになり…結構ショックでした。笑

 

 

そんな感じかなー。

ただただワクワク楽しいだけなわけでもなく、メッセージにまっすぐに心打たれたわけでも無かったけど、

色々深く考えた良き時間でした。

 

★私的観劇公演★

2021年1月15日 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

            1月26日 ステラボール

 

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どうでもいいけどMogut観てからミートパイが食べたくて食べたくて、人生で初めてミートパイ買って食べました。

美味しかった。

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